京都地方裁判所 昭和55年(行ウ)9号 判決 1985年1月30日
京都府亀岡市内丸町二番地一〇
原告
訴外亡間野藤太郎訴訟承継人
間野種一
京都府亀岡市篠町柏原中又六二番地二
原告
訴外亡間野藤太郎訴訟承継人
間野鐘一
京都府亀岡市篠町柏原中又五八番地五
原告
訴外亡間野藤太郎訴訟承継人
宇品昭子
原告ら訴訟代理人弁護士
高田良爾
京都府船井郡園部町小山東町溝辺二一番地二
被告
園部税務署長
菊池和夫
指定代理人検事
浦野正幸
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら
被告が、昭和五二年一二月二六日付で訴外間野藤太郎に対してした、間野藤太郎 昭和四九年分ないし昭和五一年分(以下本件処分という)のうち、昭和四九年分の総所得金額が一四四万五〇〇〇円、昭和五〇年分の総所得金額が一四五万円、昭和五一年分の総所得金額が二〇二万五〇〇〇円を、いずれも超える部分及び過少申告加算税賦課決定の全部を取り消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決。
二 被告
主文同旨の判決
第二当事者の主張
一 本件請求の原因事実
1 間野藤太郎は、京都府亀岡市内丸町二番地一〇で、燃料の小売業を営んでいたが、昭和五五年一一月七日死亡し、原告らが、その遺産相続人としてその権利義務を承継取得した。
間野藤太郎は、本件係争年分の所得税の確定申告をしたところ、被告は、本件処分及び過少申告加算税賦課決定処分をした。そこで、間野藤太郎は、本件処分に対し、異議及び審査請求をしたが、その経緯と処分内容は、別紙1の1ないし3に記載されたとおりである。
2 しかし、本件処分は、次の点で違法である。
(一) 被告の税務調査に際し、その調査理由を開示せず、一方的に取引先の反面調査をした。
(二) 被告は、間野藤太郎の本件係争年分の事業所得を過大に認定した。
3 結論
原告らは、被告に対し、本件処分中原告らが請求の趣旨第一項で主張する額を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分の全部の取消しを求める。
二 被告の答弁
本件請求の原因事実中1の事実は認め、2の主張を争う。
三 被告の主張
1 税務調査について
被告は、部下職員をして、昭和五二年九月一九日以降数回にわたり間野藤太郎方に臨場させたが、間野藤太郎は、調査の具体的理由の開示がないことを理由に、取引に関する具体的な説明や帳簿書類の提出をせず、全く非協力的態度をとった。そこで、被告は、やむをえず反面調査をして推計課税をしたもので、被告の税務調査に違法の点はない。
2 間野藤太郎の本件係争年分の事業所得について
(主位的主張)
(一) 間野藤太郎の本件係争年分の事業所得は、次表記載のとおりである。
区分 昭和四九年分 昭和五〇年分 昭和五一年分 備考
<イ>売上金額 六二五〇万八三九一円 七八六二万六一六六円 九〇六六万七五六九円 <ロ>÷(同業者原価率)
<ロ>売上原価 三六四七万九八九七円 四八一五万八五二七円 五四六四万五三四四円
<ハ>算出所得金額 一四四三万九四三八円 一八五九万五〇八八円 二一七〇万五八一六円 <イ>×(同業者所得率)
<ニ>特別経費 三六万八九六〇円 一〇〇万一四六二円 二七六万一四〇二円
<ホ>専業専従者控除額 五五万〇〇〇〇円 八〇万〇〇〇〇円 八〇万〇〇〇〇円
<ヘ>事業所得金額 一三五二万〇四七八円 一六七九万三六二六円 一八一四万四四一四円 <ハ>―<ニ>―<ホ>
(二) <ロ>売上原価
間野藤太郎の本件係争年分の仕入先と仕入金額は、別紙2記載のとおりである。なお、原告は、棚卸をしていないから、本件係争年分の期首と期末の各棚卸高に大差がないものとし、仕入金額を、売上原価とする。
(三) 同業者の原価率及び所得率
京都市内を除く京都府下の全税務署管内から、次の条件に該当するすべての同業者八名(以下AないしHという)を選んだ。
(1) 燃料小売業を営む者であること。ただし、主として自動車その他の燃料用ガソリン及び軽油を小売するもの(いわゆるガソリンスタンド業)は除く。
(2) エルピーガス小売業を営む者であること。主として一般家庭及び業務用にエルピーガスを販売している者であり、工業用、自動車用燃料として販売している者は除く。
(3) 販売総額のうち家庭・業務用エルピーガスの販売額が五〇パーセント以上であること。
(4) 燃料小売業及びそれに関連する業種以外の業種を兼業していないこと。
(5) 青色申告書を提出していること。
(6) 年間を通じて事業を継続して営んでいること。
(7) 不服申立てまたは訴訟係属中でないこと。
同業者八名の原価率(売上金額に占める売上原価の割合)及び所得率(売上金額に占める算出所得金額の割合)は、別紙3の1ないし3記載のとおりである。
(四) <イ>売上金額
区分 <ロ>売上原価 同業者原価率 <イ>売上金額(<ロ>÷原価率)
昭和四九年分 三六四七万九八九七円 五九・三六% 六二五〇万八三九一円
昭和五〇年分 四八一五万八五二七円 六一・二五% 七八六二万六一六六円
昭和五一年分 五四六四万五三四四円 六〇・二七% 九〇六六万七五六九円
(五) <ハ>算出所得金額
年分 <イ>売上金額 同業者所得率 <ハ>算出所得金額(<イ>×所得率)
昭和四九年分 六二五〇万八三九一円 二三・一〇% 一四四三万九四三八円
昭和五〇年分 七八六二万六一六六円 二三・六五% 一八五九万五〇八八円
昭和五一年分 九〇六六万七五六九円 二三・九四% 二一七〇万五八一六円
(六) <ニ>特別経費
区分 昭和四九年分 昭和五〇年分 昭和五一年分 備考
イ 雇人費 〇円 〇円 二四五万五〇〇〇円
ロ 支払利子 二一万二九六〇円 七五万一三六二円 一三〇二円
ハ 地代家賃 四万八〇〇〇円 五万三〇〇〇円 一〇万八〇〇〇円 原告申立
ニ 建物減価償却費 一〇万八〇〇〇円 一九万七一〇〇円 一九万七一〇〇円 原告申立
合計 三六万八九六〇円 一〇〇万一五六二円 二七六万一四〇二円
なお、原告申立とは、原告が国税不服審判所に提出した計算書で申し立てたものである。
(七) <ホ>事業専従者控除額
間野藤太郎が、本件係争年分の所得税確定申告書に記載した額である。
(八) まとめ
間野藤太郎の本件係争年分の<ヘ>事業所得金額は、いずれも、本件処分による総所得金額(事業所得金額)を上廻るから、本件処分には、所得金額を過大に認定した違法はない。
(予備的主張)
(一) 間野藤太郎の本件係争年分の事業所得金額は、別紙4の1ないし3記載のとおりである。以下に詳述する。
(二) <ロ>売上原価
間野藤太郎は、住所地で間野燃料店を、京都府船井郡園部町上木崎上中畷二番地で園部ガス商会を、それぞれ営んでいた。
ところで、訴外京滋忠燃株式会社からの仕入金額を、二店に分けると、別紙5のとおりになる。これは、実額で認定できるから、他の仕入金額も、京滋忠燃株式会社の実額割合によって算出すると、別紙6記載のようになる。但し、その合計金額は、別紙2と同じである。
(三) 同業者の原価率及び所得率
同業者AないしHを、さらに次の条件を付加して選択しなおした結果、いずれに関しても同業者A、D、E、G、Hがえられた。
(1) 間野燃料店の同業者に関しては、売上原価の金額が、本件係争年分を通じ、一〇〇〇万円から三九〇〇万円までの範囲内にあること。
右の金額のうち、下限は、間野燃料店の昭和四九年分の売上原価一八〇八万二五二〇円の二分の一の金額(ただし、一〇〇万円未満は切上げ)であり、上限は、同店の昭和五一年分の売上原価二六三〇万六一二一円の一・五倍の金額(ただし、一〇〇万円未満は切捨て)である。
(2) 園部ガス商会の同業者に関しては、売上原価の金額が、本件係争年分を通じ、一〇〇〇万円から四二〇〇万円までの範囲内にあること。
右の金額のうち、下限は、園部ガス商会の昭和四九年分の売上原価一八三九万七三七七円の二分の一の金額(前記(1)に同じ)であり、上限は同会の昭和五一年分の売上原価二八三三万九二二三円の一・五倍の金額(前記(1)に同じ)である。
同業者A、D、E、G、Hの五名の原価率及び所得率は、別紙7の1ないし3記載のとおりである。
(四) <イ>売上金額、<ハ>算出所得金額
これらの計算方法は、主位的主張のそれと同じである。
(五) 特別経費等
(1) 雇人費
原告らが提出した給料支払明細書など雇人費関係の書証によって間野藤太郎の本件係争年分の雇人費を計算すると、別紙8に記載したとおりになる。
(2) 支払利子
昭和四九年分 八五万四二一四円
昭和五〇年分 一七九万六九八二円
昭和五一年分 一五七万一五二八円
(3) 地代家賃、建物減価償却費
主位的主張と同額である。
(4) 集中ガス設備の減価償却費
間野藤太郎の本件係争年分の集中ガス設備の減価償却費は、次のとおりである。
昭和四九年分 六五万八〇一九円
昭和五〇年分 一三二万七二三三円
昭和五一年分 一六三万五八六四円
(六) 事業専従者控除額
主位的主張と同額である。
(七) まとめ
間野藤太郎の本件係争年分の事業所得金額は、いずれも、本件処分のそれを上廻るから、本件処分には、所得金額を過大に認定した違法はない。
四 原告らの反論
1 被告の主張中次のことは認める。
(一) 被告の部下職員が税務調査に臨場したが、間野藤太郎が、帳簿書類の提示をしなかったこと。
(二) 別紙2の仕入金額。ただし、「その他小口現金仕入」をのぞく。
(三) 雇人費を原告ら提出の書証(賃金支払明細書など)によって計算すると、被告主張の金額に計算上なること。
(四) 予備的主張(五)(2)の支払利子中昭和四九年分、昭和五〇年分の各金額。
(五) 地代家賃、建物減価償却費、集中ガス設備の減価償却費及び事業専従者控除額の各金額。
2 同業者について
同業者AないしHは、間野藤太郎の営業規模の点で類似性を欠く。営業規模に類似性があるというためには、売上原価の類似性を必要とする。ところが、同業者AないしHは、間野藤太郎と比較し、売上金額で、三倍ないし四倍の差があり、この点で類似性がない。
3 被告は、昭和五九年九月六日付第一〇準備書面で予備的に主張していた所得金額の主張を全部撤回して、新たな予備的主張をしているが、右撤回には異議がある。
4 雇人費について
被告主張の雇人費のほか、小切手帳による支払がある。
昭和四九年分 一三六万四二五七円 甲第一〇〇号証の一ないし三
昭和五〇年分 二万三四六〇円 甲第一〇〇号証の三
昭和五一年分 一〇〇万八五五二円 甲第九七号証甲第一〇二号証の一
そこで、原告らは、雇人費として、次の額を主張する。
昭和四九年分 四七五万七四七九円
昭和五〇年分 六三七万五三四五円
昭和五一年分 七八〇万五五五三円
5 支払利子について
昭和五一年分
京都信用金庫園部支店 一二九万五六六九円
京都信用金庫亀岡支店 八万六六三六円
国民金融公庫西陣支店 一九万九九九四円
京滋忠燃株式会社 一三〇二円
計 一五八万三六〇一円
6 その他の減価償却費について
昭和四九年分(円) 昭和五〇年分(円) 昭和五一年分(円)
車輌 五〇万八一三五 六五万八四一四 八一万四五七九
地下タンク 一八万四一四〇 一八万四一四〇 一八万四一四〇
ガスボンベ 七三万一九四八 七三万一九四八 七三万一九一〇
ガスメーター 五二万三九八〇
7 外注費(屋内工事の費用)について
間野藤太郎の本件係争年分の外注費は、特別経費として控除されるべきである。
昭和四九年分 六二〇万六二九五円
昭和五〇年分 八八〇万八一一〇円
昭和五一年分 一二〇四万六〇六〇円
第三証拠関係
本件記録中の証拠関係目録記載のとおり。
理由
一 本件請求の原因事実中1の事実は、当事者間に争いがない。
二 本件税務調査の違法について
本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、本件税務調査に原告らが主張する違法な点が認められる証拠はない。
原告らは、間野藤太郎が本件税務調査の際、帳簿書類を提示しなかったことを自認しているのであるから、被告としては、推計の方法によって課税するしかなかったのである。
三 そこで、被告主張の推計課税の正当性について判断する。
被告主張の主位的主張と予備的主張を比較したとき、後者の方が間野藤太郎の営業実体に合致させるべく詳細にわたって主張されているから、まず後者から判断することにする。そして、被告は、主位的主張と予備的主張とを厳格にその順位を固執して主張する趣旨ではなく、要は、本件処分の正当性を主張するにある。
なお、被告が、昭和五九年九月六日付第一〇準備書面で、従前の予備的主張を撤回したことに対し、原告らは、異議を述べているが、税務訴訟では、総額主義が採用されているから、処分庁としては、更正処分の正当性を主張するため、時機に遅れない限り、自由に主張を追加、変更できるとしなければならない。そして、被告の右撤回と新たな予備的主張が、特に時機に遅れた攻撃防禦方法であるとは認められない。したがって、原告らの異議は、採用できない。
1 売上原価
別紙2の仕入金額は、当事者間に争いがない。ただし、「その他小口現金仕入」をのぞく。
成立に争いがない乙第一号証、証人村上満夫の証言により、「その他の小口現金仕入」として、次の額が認められ、この認定に反する証拠はない。
区分 認定額 備考
昭和五〇年分 八万七六二六円 被告主張どおり
昭和五一年分 二一万〇七六九円 被告主張額は、二一万七九三九円
そうすると、間野藤太郎の仕入原価は、別紙9の<2>売上原価欄に各記載のとおりになる。なお、間野藤太郎の本件係争年分の期首期末の棚卸高に大差がないものとし、この仕入原価を売上原価とする。
被告は、間野燃料店と園部ガス商会に二分して仕入原価を主張しているが、総額に変わりがないから、ここでは、二分しないことにする。
2 同業者の原価率、所得率
成立に争いがない乙第二号証、証人尾形一弥の証言によって成立が認められる同第三ないし第八号証や同証言によると、被告は、間野藤太郎に対する本件係争年分の推計課税をするについて、被告主張の条件のもとに、京都市以外の宇治、園部、福知山、宮津、峰山、舞鶴の各税務署から同業者を選出したところ、別紙3の1ないし3に記載された同業者AないしHがえられたことが認められ、この認定に反する証拠はない。
ところで、原告間野種一の本人尋問の結果(第一回)によると、間野藤太郎の燃料小売業のうち、一般家庭用及び業務用プロパンガスの販売額が、販売総額の五〇ないし六〇パーセントを占めていることが認められるから、被告の付した条件は相当であったといわなければならない。
さて、被告は、同業者AないしHのうち、同業者A、D、E、G、Hを選んでいるが、当裁判所は、本件係争年分を通じ、売上金額が三〇〇〇万円に達しない同業者G、Hを除外する。それは、被告が同業者AないしHを同業者A、D、E、G、Hに絞り込んだ手法を更に厳格に押し進めるもので、売上金額の点では、これによって、より間野藤太郎の売上金額に近似することになり、合理的といえる。
そこで、同業者A、D、Eによって、同業者の原価率、所得率を計算すると、別紙9の<3>原価率、<4>所得率の各欄掲記のパーセントになることは、計算上明らかである。
3 算出所得金額
別紙9の<5>算出所得金額欄記載の金額になる。
4 雇人費
原告ら主張の雇人費は、成立に争いがない乙第二六ないし第二八号証の各一によるが、乙第二六ないし第二八号証の各一を作成するための原資料の提出がないから、これらによって、直ちに原告ら主張の雇人費を認めるわけにはいかない。
そして、原告らは、小切手で支払った雇人費があるとして、甲第一〇〇号証の一ないし三、同第一〇一号証の一、二を提出しているが、これらが、給与支払明細書(甲第七ないし第三三号証、同第三七ないし第三九号証、同第四一ないし第四四号証、第四六ないし第五七号証、同第六六ないし第六九号証、同第七二ないし第七五号証、同第七九ないし第八一号証)や出金伝票(同第三四ないし第三六号証、同第四〇号証、同第四五、四六号証、同第五八ないし第六五号証、同第七〇、七一号証、同第七六ないし第七八号証、同第八二ないし第九八号証)による給料の支払と重複している可能性があるから、小切手の耳に「給料」とあることから、直ちに、給与支払明細書や出金伝票のほかに給料の支払があったとの心証をひかない。この点に関する原告間野種一の本人尋問の結果(第一、二回)は、採用しない。
そこで、間野藤太郎の本件係争年分の雇人費は、被告の認める範囲である別紙8の金額を計上する。
5 支払利子
昭和四九年分、昭和五〇年分の支払利子は、当事者間に争いがない。
昭和五一年分
成立に争いがない甲第三号証の一ないし三によると、被告主張の一五七万一五二八円であることが認められる。なお、原告らの主張額は、違算に基づく。
6 地代家賃、建物減価償却費、事業専従者控除額
これらは、いずれも、当事者間に争いがない。
7 集中管理方式による減価償却費
(一) 集中ガス設備の減価償却費
これは、当事者間に争いがない。
(二) 地下タンク
原告本人尋問の結果(第一回)によると、原告主張の地下タンクは、白灯油の地下タンクであって、プロパンガス供給用でないことが認められ、この認定に反する証拠はない。
そして、白灯油地下タンクは、特別経費に当たらないから、この減価償却費の主張は、採用できない。
(三) ガスボンベ、ガスメーター
本件に顕われた証拠を仔細に検討しても、これらが、ガス集中管理方式による供給設備に含まれることが認められる証拠はない。したがって、これらが、特別経費に当たるとする原告らの主張は、採用しない。
(四) 車輌の減価償却費
甲第一号証に掲記の自動車の車種、構造を検討しても、原告が主張するガス集中管理方式による供給に必要な特殊運搬具とはいえない。したがって、同業者の一般経費には、通常の車輌の減価償却費が計算ずみであるから、所得率を適用する場合、車輌の減価償却費を別に取り上げることはできない。
8 外注費
原告ら主張の外注費は、前掲乙第二六ないし第二八号証の各一に記載された金額であるが、この裏付けとなる原資料を提出していないから、直ちにこの金額が正当であるとして採用するわけにはいかない。
前掲乙第一号証によると、国税不服審判所は、屋内工事の費用を次のとおり認め、これを、売上原価に加算しており、特別経費とはみていないことが認められる。
昭和四九年分 五四四万二四七〇円
昭和五〇年分 一五五万八七六五円
昭和五一年分 二〇四万六七二〇円
ところで、原告間野種一の本人尋問の結果(第一回)によると、この屋内工事の費用は、施主が負担することが認められるから、外注費は、売上の方にも計上し、他方その外注先に支払われた分は経費となる筋合である。そうすると、原告らが主張するように、外注費のすべてを特別経費としてだけ控除してしまうことは、間違いである。しかし、本件では、被告自身売上に計上していないし、仮に売上に計上することが可能であっても、外注費のうち外注先にいくら支払われたかが認められる資料がないから、当裁判所は、原告ら主張のすべての外注費を特別経費として控除しないことにする。
9 まとめ
間野藤太郎の本件係争年分の事業所得金額は、別紙9記載の金額になることは、計算上明らかである。
年分 当裁判所の認定額 本件処分の額
昭和四九年分 七一七万六八一一円 五一二万〇八九〇円
昭和五〇年分 九七七万〇一六四円 七二六万四二一二円
昭和五一年分 一二六八万六六四〇円 八四七万〇八一二円
そして、この額が、本件処分によって認定された事業所得全額を上廻る金額であることは、いうまでもない。
原告らは、間野藤太郎の本件係争年分の所得控除額を明らかに争わないから自白したものとみなす。
そうすると、算出税額及び過少申告加算税額も、本件処分のそれを上廻ることになる。
四 むすび
本件処分には、間野藤太郎の事業所得額を過大に認定した違法はないことに帰属するし、本件税務調査にも違法の点がないから、原告らの本件請求は、その余について判断するまでもなく失当として棄却を免れない。そこで、行訴法七条、民訴法八九条に従い、主文のとおり判決する。
別紙1の1
間野藤太郎の昭和49年分所得税の課税関係一覧表
<省略>
別紙1の2
間野藤太郎の昭和50年分所得税の課税関係一覧表
<省略>
別紙1の3
間野藤太郎の昭和51年分所得税の課税関係一覧表
<省略>
別紙2 仕入金額の明細
<省略>
別紙3の1
昭和49年分同業者率一覧表
<省略>
別紙3の2
昭和50年分同業者率一覧表
<省略>
別紙3の3
昭和51年分同業者率一覧表
<省略>
別紙4の1
昭和49年分事業所得金額の計算明細
<省略>
別紙4の2
昭和50年分事業所得金額の計算明細
<省略>
別紙4の3
昭和51年分事業所得金額の計算明細
<省略>
別紙5
京滋忠燃(株)からの仕入金額
<省略>
別紙6
営業所別の仕入金額
<省略>
(注) 仕入先欄の、その他仕入は仕入金額のうち京滋忠燃(株)以外の仕入先からの仕入総額を示す。
別紙7の1
昭和49年分同業者率一覧表
<省略>
別紙7の2
昭和50年分同業者率一覧表
<省略>
別紙7の3
昭和51年分同業者率一覧表
<省略>
別紙8
<省略>
別紙9
裁判所の認定額
<省略>